若手社員レポート

Kさん(勤続年数:0年10ヶ月)

【勤続年数】0年8ヶ月
【主な業務内容】包装機設計

社員の報告

木谷社長

お疲れ様です。Kです。

6月3日定期報告を提出致します。

この1か月は〇〇〇の業務に携わっておりました。
モデリング及び部品図を作成、提出致しましたが先方の試作機でのテスト結果、不具合が発生し、何度か機構を変更する必要がありました。

元々の仕組みとしては、・・・
※こちらに続く文章は機密情報のため省略させていただきます※

1度目の試作問題点として以下の点が挙げられました。
・飛び出た後のばねの保持力が小さい(自重に負けて下がってくる)
・ばねが飛び出た際のストッパボルト同士の衝突音が大きい

ばねは元々選定されていたものをモデルに反映したのですが、こちらで強いばねを選定し直し、設計を見直す必要がありました。条件として、
・自重に負けない張力を持たせること
・板の摺動に必要なストローク長+αの調節代の余裕を持たせること
を守る必要がありましたが、ばねを付けるシャフト長は伸ばせる長さに制約があるため、ばねの自然長も限られてしまい、条件に適したものを見つけるのに苦労しました。

衝突音に関しては、ウレタン付のストッパボルトでも音がうるさいとのことで、ショックアブソーバーを用いる案で進め、ばねとショックアブソーバーの大きく2点を変更しましたが、2度目の試作で以下のような結果になりました。

・ショックアブソーバーにより衝突音は軽減されたが、ワーク吸着に悪影響が出た
→ワークに触れる終端で減速することで3つある吸着パッドの接触タイミングがずれ、ワーク姿勢が変わり吸着ミスが起こるような状況。
ショックアブソーバー無しだと勢いがあるためほぼ同時に接触するため吸着状態は良いが、衝突音が大きいといった状況であるとお聞きしました。

客先より改善案を頂き、結局上記のばねとショックアブソーバーは廃止し、マグネットを用いたりと全体の構成を当初より変更することとなりました。問題点を一つ解決できたと思っても今度は別の問題点が発生したりと、実際に製作してみると中々思い通りにいかないことも多く設計の大変さを垣間見たように思います。やってみて初めて分かることもありますが、図面段階でもっと色々なことに配慮し検討していなければならないと痛感致しました。

今回の報告は以上となります。
忙しいところ恐れ入りますが、ご確認の程宜しくお願い致します。

社長からの返信

Kさん

ご苦労様です。
報告ありがとうございます。

〇描いた図面と実際とは違ったと体感したようです。起こりうる事象を考え状態を想像し図面に反映することが設計の仕事であるという事を改めて感じたと思います。とは言え実際に作ってみないと分からないと考えられる事は仕方ありません。
  
いつも言っていますが一つには日常の身の回りの細かな現象に興味を持って気にして記憶しておく事を始めとし、今回のように日頃の設計し製作される中で気づかされる事を忘れないように次の設計に生かすことが出来なければならないと考えます。そうした知識の上で考え想像し予防策をどれだけ設計図に反映できるかが大切になります。それを忘れないようにすれば今回の不具合は次の設計の為にも熊野さんの設計者としての力量にも生きてきます。作って見なければわからない事が少なくなります。

〇ばねの強さについては以前も書きましたが私もなかなか一度で決める自信はあまりありません。単純な動作や機構ならば比較的決め易いですが外力(配管抵抗、機構的に動作途中で荷重が変化する、ばね力を作用させる物の大きさ、ばね力を作用させ動作させたい時間的な制約、シリンダ等の駆動力を変化させるばね力の塩梅、ばね力が作用する物の自重、カムなどへの押しつけ力、ばね荷重の変化、遠心力等々)によって様々にあるからでしょう。

そもそもばね荷重の感覚は掴みにくい(荷重が小さいと特に)、機構に組み込んだ時の荷重状態の計算値は出ても実際は思うようにならないことが多い、という印象があります。また、ばね力は計算値より強くしておけばいいというわけにもいかない場合もあり決めきれないのかとも思います。
  
そこで以前書いたようにばねを交換することを想定してその取付スペースに余裕を持っておく事を常に考えるようにしています。
  
〇ばねの使い方を観察するだけでもいいかもしれません。身近のばねを探すと、自転車のスタンド、屋根裏に上るための梯子を収納するバランサーのばね、公園の幼児が乗るばねの上で揺れる乗り物、バッティングセンターのピッチングマシン、子供がジャンプして遊ぶホッピング、ボールペン、トランポリン、パンタグラフ等々。それらがどの様な働きをしているか、力の作用する位置によってばねの大きさが違うのではないか等を考えながら観察することも面白いと思います。

〇ショックアブソーバーの選定もややこしいですね。衝撃吸収は頻度が少なく動作時間に余裕があれば問題ないですが減衰時に動作が遅くなるので報告にあるように早い動作を求められるときには不利ですね。ストッパを使わずに動作を早くし位置決めをするとなれば通常はカムを考えます。スペースとストロークが許せばですが・・。

マグネットで対応という事ですが機会があればマグネットの使い方を教えてください。また、アブソーバーを使って制御でソフト的に逃げることがでないかという事も考えてはどうでしょうか。多分、タクトが厳しくなるので否定されるかもしれませんが・・・。

〇設計は課題や問題を解決するものです。しかし、図面通りに作られた製品が何の問題もなく完成することは珍しい。動きのある装置ならば尚更です。それをできる限り問題なく完成させるには知識と経験と想像力で設計をカバーするしか解決方法はないと思います。

〇毎度も言います。
・製品の完成時に起きうることを思いつく限り想像し予測した設計ができればミスが少ない。
・よく考えられた設計であれば組立て後、不具合が発生しても修正は軽く済むもしくは何とかなる。
・よって、設計時にどれだけ完成品の状態を想像できるかが設計者の力量を表すことになる。
   
〇Kさんは今いい経験をしています。客先から急かされると思いますが辛抱強く今起きている事を解決しそれを次に生かしながら自信を深めてください。設計力はそれの繰り返しで身に付くものでもあります。

体調は大丈夫ですか。健康第一です。
よろしくお願いします。


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