社長の独言

社長独言(働くための基本的資質)

いままで私の育った環境を書いてきたが決して昔自慢や特別だというつもり
はない。私の同世代の人間はおよそ似たような環境で育ったはずである。
私と同じ田舎育ちだったらほとんど同じだろう。

私は今の若者と我々世代の違いがなぜ起きているのかを自分の経験を元に
考え、その違いが就職が決まりにくい原因のひとつになっているのではないだ
ろうかと想像している。
我々世代が無意識に身に付けたであろうことを多くの若者が持ち合わせてい
ないようにみえる。そしてそれは企業が少なくとも入社前までに身につけて
おいてもらいたいと思っていることのようである。
それについて考えてみたい。

以下は、大企業、中小企業関係なく私が実際聞いたことである。

〇挨拶ができない。
 (挨拶は他人と人間関係を築く為の基本)
  私は若いころ理屈抜きに挨拶を強要された。嫌々やっているうちにこれ
  は他人といい関係を作る為に便利だ、気分もいいと気づいたと思う。
  高校生の頃までは挨拶など照れ臭かった。

〇いちいち指示しなければ動けない。
 (指示する人はそのうち相手にしなくなる。自立できない。伸びない)
  私はいちいち指示されて動く自分が情けない気がしていた。
  ただの手伝いだとしても大人のように自分で決めて動きたかった。 

 
〇察して動けない。
 (考えることをしない。先を読めない。仕事を依頼されにくい。頼む相手
  が面倒になる)
  私は他人に言われる前にできるようになったら嬉しくてしかたなかった。
  察して動くとは具体的に例えればテレビドラマで手術のサポートをする
  優秀な看護師が医者が次に何をするか見極め次々と手術具を渡す様子を
  思い浮かべると解りやすいだろう。
  阿吽の呼吸という表現も察することと近いかもしれない。
  察して動ければほとんどの仕事に万能で効くと私は考えている。
  何かを共同でする時に各自が自分の役割を考え察し能動的に動けばこれ
  ほど効率的なことはない。
  日本人が得意と言われた「察すること」は日本の高度経済成長期に世界
  が相手の企業にとって社員を採用したら残らずついてくるコストのかか
  らない強力な武器だったろうと思う。

  
〇注意したり叱るとヘコむかふて腐れる。
 (そのうち相手にされなくなり教えてもらえなくなる)
  私は叱られる度に恥ずかしくて二度と失敗するか!と思っていた。自分
  が悪いと分かっていても叱る人に腹が立ったが・・・。

〇報告できない。
 (周囲に迷惑が及ぶ。他も含めた計画に大きな影響を与える)
  私にはそれができないまたはしないことが解らない。
  これができないと企業で頼りにされる人材にはなれないだろう。

〇仕事に行き詰まっても相談しない。
 (自分も苦しくなる。周囲に大迷惑が及ぶ。仕事を任せられなくなる)
  周囲の事を考えられなくて自分の事しか考えられないと判断される。 

〇学業成績は優秀だったのに考えることができない人がいる。
 (企業の解決すべき問題は入試問題のように答えは用意されていない)
  日頃から様々なことに興味をもち「なぜだろう」と考える習慣を持つし
  かない。学業優秀なのに考えられない、こればかりはボンクラな私には
  全く理解できない。

〇突然会社に来なくなり代わりに親が辞めると言ってきた、または親が会社
 でわが子がいじめられていると言ってくる。
 (いつまでも自立できない。仕事を任せられない)
 私の子供のころの鼻たれ泣き虫をいつまでも憶えている人が何につけ遠ま
 わしに「お前が出来るわけがない!」と言い募るので私は自分では何もで
 きないのかと思い込まされ不安だった。だから出来るわけがないと言われ
 る機械を設計し出来上がった時には頭の上に覆いかぶさる暗雲が外れたよ
 うな解放感を味わった。
 ボンクラがせめて学校頭脳で勝りながら自力でできない連中に負けないた
 めに私は自分の力でなんとかするしかないと考える。
 (私は頭脳優秀で自立して自分の力で生きている人間を見ると実に羨まし
  くて尊敬せずにはいられない。)
 

 
少しいらぬことも書いたが企業はおよそこのような状況に困っている。
以上のような「常識的なことができる」、「非常識なことをしない」という
まずは基本的資質を持った人材、言い換えるなら基本的な部分で自立してい
る人材を企業は求めているように思う。
そのような資質を備えていれば社員となった時に企業は実務に必要なことの
み効率的に教育ができるだろう。

それなりに大人になった脅すような怖い顔した大したことのないプライドや
習慣が身についた連中に企業の担当者が挨拶から教えようとすることを想
像したらぞっとする。
企業に雇ってもらうため企業の要求に応えようと自分を改善したいなら誰か
に頼るのではなく自分で考え行動し良い習慣を身につけることだ。
人の役に立つことが働くことでそれはどういうことか意識して考えれば簡単
に理解できることである。
(常識、非常識の解釈は人によってちがうという意見があるだろう。一般的
に企業に勤めるならばという事を前提にする)

それなりの大人になって身につけるのは苦労するかもしれない。
また、これらを身に付けたからと言って希望する企業に就職できるとは言え
ない。しかし、企業が望むことだから採用される確率は確実に上がるだろう。
いつでもどこでも心がけでできることだからそんなに難しくはないと思う。


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